リチャード獅子心王〜アーサー王に憧れた男の物語〜

イングランド

リチャード1世。

彼はその勇猛な戦いぶりから多くの人々から獅子心王と呼ばれ人気を集めたイングランド王だ。

そして、彼にもまた敬愛する人物がいた。

騎士王と呼ばれ、世界中の騎士物語の源流になったアーサー王物語の主人公、アーサー王だ。

騎士王に憧れた獅子心王の物語とはどのようなものだったのか。


アーサー王物語 (偕成社文庫) [ ジェイムズ・ノウルズ ]

家族との争い

リチャードはイングランド王ヘンリー二世の息子としてイングランド王国で生まれた。

ヘンリー二世

ヘンリー二世の息子にはリチャードの他にもジョンなど、3人の男子がいた。

ヘンリー二世は息子たちにそれぞれ領地を分配し、リチャードは母アリエノールの領地、アキテーヌを与えられた。

しかし、家族間での領地や地位をめぐる争いが絶えず、リチャードも父や兄弟と争うこととなる。

兄の若ヘンリーがなくなると、イングランド王の後継者はリチャードとなる。

だが、リチャードの弟のジョンを溺愛していたヘンリー二世はリチャードを後継者にする代わりに統治しているアキテーヌをジョンを譲るように命ずる。

ジョン

リチャードは後継者とは名ばかりの無力な地位になることを拒否し、父ヘンリー二世に反抗し争った。

その後父とは一時的に和睦するが、再び争いになり父が病死するまで続いた。

父の死後リチャードはイングランド王に即位する。


Fate/strange Fake(1) (電撃文庫) [ 成田 良悟 ]

サラディンとの戦い

イングランド王に即位してすぐに、リチャードは第三回十字軍に参加することになる。

第三回十字軍とは、イスラムの英雄サラディンによって征服された聖地エルサレムを奪還するためにローマ教皇グレゴリウス八世の呼びかけに応じてキリスト教諸国の王たちが参加した遠征である。

サラディン

この十字軍にはフランス王フィリップ二世、バルバロッサと呼ばれた神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世など、ヨーロッパを代表する王たちが参加し、キリスト側がエルサレム奪還に本気になったのがうかがえる。

フリードリヒ一世

その後、十字軍はイスラム側の土地アッコンを征服する。

この時、オーストリア公レオポルト五世がアッコン征服の功績を誇示し旗を掲げているところを、リチャードの側近が叩き落としたため、レオポルト五世は激怒してオーストリアに帰国してしまう。この時の因縁が後の事件を産むことになる。

レオポルト五世

またその他の王も十字軍から抜けている。

フリードリヒ1世はキリキアという場所で溺死し(暗殺ともいわれている)、フィリップ二世は病気を理由に帰国している。

そうして残った王はリチャードのみとなる。

リチャードはアッコンなどで捕らえた捕虜と十字軍側の捕虜を交換するためにサラディンの弟との交渉に臨む。しかしサラディンの弟は現れず、捕虜のための食糧や監視の費用が尽きたリチャードは捕虜2700人あまりを処刑した。

これはサラディンが十字軍側の捕虜を全員解放したことと対照的なこととして語られている。

その後リチャードはアルスフの戦いでサラディンに勝利するが、イスラム側も勢力を増強し、戦いは続いた。

そして両軍とも疲弊していたことやジョンとフィリップ二世が手を組んでイングランドを乗っ取ろうとしていたこともあり、リチャードはサラディンと和平し休戦協定を結んだ。

この協定ではキリスト教徒でも非武装であればエルサレムを巡礼することが認められた。

こうして第三回十字軍は終了した。

一年以上リチャードとサラディンは激戦を重ね、サラディンはリチャードをキリスト教徒一の騎士と称えた。

獅子心王とイスラムの英雄の戦いはこうして幕を閉じた。


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獅子心王、捕囚される

フィリップ二世とジョンのイングランド乗っ取りを防ぐために、十字軍終了後リチャードは急ぎイングランドに戻る。

しかし途中のオーストリアで、因縁のあったレオポルト五世によって捕らえられ、デルシュタイン城に幽閉された後に神聖ローマ皇帝のハインリヒ六世に引き渡されてしまう。

この時にジョンはリチャードが死んだことにしてイングランドの王位につこうとしたが、民衆の支持が得られなかったため断念することになる。

戦ってばかりのリチャードだったが民衆から人気があったことがうかがえる。

母が奔走し、獅子心王イングランドに帰還

リチャードは母のアリエノールから最愛の息子として愛されていた。

また、リチャードにアーサー王の物語を語り、アーサー王に憧れる騎士にしたのもこのアリエノールだ。

アーサー王の剣が「エクスカリバー」と呼ばれる起源となった「ブリュ物語」は作者のウァースによってアリエノールに献上されている。

アリエノールはハインリヒ六世よって提示された身代金10万ポンドもの大金を集めるために各地を奔走した。また、高齢で真冬であったのにもかかわらず直接リチャードの身柄を引き取りに神聖ローマ帝国のケルンにまで向かった。

こうした母の奔走もあってリチャードは解放され、イングランドに帰還する。

リチャードが解放されたと聞いてフィリップ二世はジョンに手紙で

「気を付けろ、悪魔は解き放たれた」と伝えたといわれている。


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獅子心王、一本の矢に倒れる

こうして王位に戻ったリチャードはその後もフィリップ二世などとの戦いに明け暮れる。

しかし、獅子心王といわれた誉高き騎士の死は突然訪れる。

戦争の途中鎧を脱いでいた時にピエール・バジルという若い射手のクロスボウによって肩を打たれてしまう。

そしてこの時に受けた傷が壊疽し、10日ほど苦しんだのちに死亡してしまう。

たった一つの傷でと思うかもしれないが、当時はまだ医療が発達していなかったため一つの傷でも命取りだった。

リチャード獅子心王

アーサー王に憧れ、自身もまた獅子心王と呼ばれて後の世の人々に憧れることとなったイングランド王、リチャード一世は、多くの愛をもらった母や民衆たちに看取られながら、その生涯を終えた。

逸話 自身の愛剣は全てエクスカリバー

アーサー王に憧れたリチャードだが、彼のアーサー王にまつわる逸話がある。

リチャードはアーサー王を敬愛すると同時にエクスカリバーも大好きだった。

リチャードは自身の使っていた剣全てに「エクスカリバー」という名前を付けたという逸話がある。

アーサー王のように戦いによって民衆のために尽くしたリチャードは剣までもをアーサー王と同じにしようとしたのだ。

今の言葉でいうとアーサー王オタクのようだがそんな話もまた、リチャードの魅力の一つなのではないだろうか。


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